手づくり | 萌音のツリーができるまで

 それは突然訪れた,日本での忙しいクリスマスでした。5年間の海外生活から帰国,初めての土地つくばでの生活にやっとなじんだ頃,小一の娘が取り組んだ夏休みの課題のなかにそれはありました。

 自分の好きなツリーをデザインするなんて。娘はわくわくしながら原画を仕上げました。去年まで海外で現地の学校に在籍し,色々な国出身のお友達がいた娘には、今回のテーマ「ツリーが結ぶ世界の子ども」は身近なものでした。娘の絵にはクリーム色や薄いピンク、茶,こげ茶のヒト型がたくさん並んでいました。大好物のジンジャーブレッドを世界中の子供に見立てたらしく,みんな手をつなぎ,てっぺんには平和の鳩が………なるほど…….人形の色は肌の色だったんですね。

 そして秋,娘の描いた原画が入選した事がわかり,実際作る事になった日から私たちの忙しい日々が始まりました。説明会や制作会に参加しても,実際に去年までのものを見た事も無いのでなかなかイメージが湧きませんでした。まずは娘と一緒にホームセンターに出かけ,早々と飾られたツリーを見ながら、ジンジャーブレッド人型の一体の大きさを決め、娘が書いたかたちを厚紙に移して型を作りました。
  2センチ弱の厚みのスタイロボードを買ってきて、型を何個も取りました。それを切り抜く作業はスタイロカッターを使っていると年があけても終わらなそうだったので,大きめの工作用カッターで大まかに切って,30度カッターで仕上げをしました。この作業は小一の娘には危険なので、わたしが子供たちが寝たあとにせっせと切りました。見かねた夫が張り切って手伝ってくれましたが,勢い良く激しく切るので隣の型まで切れてしまい,結局お断りしたら「解雇された!!」といじけてしまいました(笑)。
 やっと切り終えると,一つ一つ煮物の大根と同じように面取りをして仕上げをしました。最後に娘が妹と一緒にサンドペーパーをかけて完成。 卓袱台に二人並んでマスクをしながらヤスリがけをし,部屋の隅には人型が何十個も積み上げられた様子は、まるで怪しい内職のお手伝いをさせられている子供と言った感じでした。それから先はだんだん楽しい作業になりました。
  穴をあけた頭の部分にモールを通してから,人型に色を塗ります。娘がこだわった色を揃え,晴れた休日の午後から庭で作業開始。夫と私と娘で刷毛を持ち次々に塗り,塗り終えた人型を庭に張ったロープに洗濯バサミでぶら下げて乾かします。結局薄暗くなっても終わらずに手がかじかみましたが,なんでもない会話で笑ったりしながら寒さを忘れて作業をしました。でもそのたくさんの人型がぶら下がった風景は、きっと外から見たらかなり怪しく,まるで何か変な宗教のお祈りのようで、異様な光景だったと思います。翌朝人型を見てみると細かい部分が塗れていないものも多くがっかりしました。気を取り直してスプレーで塗る作戦に変えたら短時間で早く,しかもきれいに塗る事ができました。
  人型の作成と並行して,週末にツリーのコンテナの塗装作業にも参加しました。アドバイザーの先生に案を頂いて,娘のメッセージをコンテナに書く事にしました。娘はみんなにわかってもらえるように日本語と,英語とで文章を考えました。コンテナの塗装はクレオ近くの橋の下で行ったのですが,晴れていた日だったにもかかわらず,11月の冷たい北風で体が芯まで冷えて娘の手がかじかんでしまい文字が書けなくなり,何度もQ’tのビルの中に暖をとりにいきました。
  ツリーになるもみの木がとうとう広場に設置される頃,やっとツリーのてっぺんを飾るハトが出来上がり,ジンジャーブレッドと一緒に目鼻がつきました。目には学校で使われる椅子の板をとめるのにも使われる釘を,ジンジャーブレッドの洋服のボタンには画鋲を使いました。たぶんこれが一番楽しい作業で,娘たちより夫が一番張り切っていたような気がします。確かに鋲の先に接着剤をつけて“プスッ”とさすのが妙に上手でした。

 ツリーの飾り付けを次の日に控えた夜,段ボール箱に詰められた総勢97個の完成したジンジャーブレッド人形を見ながら,楽しみな気持ちと不安な気持ちがしたのを覚えています。夫婦で相談して,下見の時に測ったツリーになる木のサイズに合わせてワイヤーを丸め,娘の描いた原画に出来る限り忠実に飾り付ける人形を配置する工夫をしました。そしてツリー飾り付け当日,背の高い力持ちのパパの出番です。子供たちも届く場所を中心に自分の役割をこなし,午前中から始めたのにも関わらず結局点灯式も近づいた夕方になってやっと完成。長く忙しいクリスマスツリー作成は終わってみると、なんだかあっという間だったような気がしましたが,家族全員満足できる仕上がりでした。

 さて,実際に出来上がったツリーは,ツリーを作成する際に大人が手伝う事によって娘が描いたイメージとずれてしまわないようになるべく余計な事はせず,また大事な事はすべて娘に決めさせることでツリーのメッセージ性が失われず,地味ながらも娘“らしい”ツリーが完成したと思いました。また何より日本に帰国してから減っていた家族での共同作業の時間を改めてツリー作成を通じて作る事ができましたが、これはもしかすると娘からの私たちへのクリスマスプレゼントだったのかもしれませんね。

 クライマックスの点灯式では,一生懸命作ったツリーにとうとう灯りがともったのを見てのどの奥の方がちょっぴり熱くなりました。ツリーを見に来てくださった人たちが,立ち止まって人形を触って「おいしそう!」とか「食べたい!」とか言ってくれたり,また写真を娘のツリーの前で撮ってくれたりするのを見て,大変だったけど本当に作ってよかったと思いました。娘も学校の先生やお友達に「すぐ萌音ちゃんのだってわかったよ!」なんて言われて,とても喜んでいました。飾り終わったツリーの人形たちは大切に保管して次のクリスマスには家の庭に飾ろうかなと思っています。

 最後にアドバイザーの先生方、スタッフのみなさまにはツリー作成に当たってあたたかい御指導を頂き,表彰式ではおまけに素晴らしい賞まで頂いて感謝の気持ちでいっぱいです。本当に素敵なクリスマスをありがとうございました。

記 萌音ちゃんのママ、有紀さん

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デザイン原画


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出来上がったツリー


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二人並んでマスクをしながらヤスリがけ


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もねの絵日記


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妹の絵日記


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